グループでいじめられたとき、逃げられないのはなぜ?

心理学

皆さんが中・高生の頃、クラスや学年の中に「グループ」があったことはありませんか?また、同じグループのメンバーにいじめられたり、仲間外れにされたこともあるかもしれません。そんなとき、なかなか他のグループに移ったりして、逃げることができないことがあります。それはなぜなのでしょうか?最新の心理学研究から考えてみましょう!

今回読んでいく論文はこちら!

鈴木修斗,舒悦,大谷和大,加藤弘通. (2025). 「中学生における仲間集団の排他性と関係性被害の関係――集団外の対人阻害の点から――」心理学研究. 96,4. pp.207-217

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/96/4/96_96.23045/_pdf/-char/ja

先行研究

先行研究では、思春期における仲間グループについて様々な研究がされてきました。
基本要素については、以下の記事で紹介しています。

また、近年の研究では、仲間から排除されることが多い人は、抑うつになるリスクが高いこと、孤独不安があるときに、より高い抑うつ傾向を示すことも分かっています。

このように、グループには良い面もありますが、仲間集団とは異なる行動をとる人を排除することもあるのです。このような性質を、「排他性」と呼び、この研究では、この排他性について検討していくことを目的のひとつにしています。

これまでの排他性のキーワード

排他性には、グループに他の人が入ってこないようにする内関係阻害(内阻害)と、グループの人が他のグループの人と関係をもたないようにする外関係阻害(外阻害)があると考えられています。

ひつじくん
ひつじくん

もうできてるグループに混ざりにくいという気持ちも、他のグループの人と仲良くなりにくい圧みたいなのも、どっちも分かる気がします

そこで、この研究では、排他性を以下のように定義します。

仲間集団内で共有される、グループ外の者をグループ内に入れない、あるいはメン
バーがグループ外の者と関係をもてないといった個人の対人関係の阻害要因となる集団規範

 このように、グループ外の人と仲良くなりにくくするには、直接的に殴ったりするわけではなく、間接的にダメージを与えることもありますよね。例えば、悪い噂を流したり、無視したり、といった行動です。このような行為は、「関係性攻撃」(relational agression)と呼ばれ、親密なグループほど起こることが分かっています。また、関係性攻撃性には個人差があります。

先行研究の課題

①外阻害(他のグループの人と関係をもてないようにする)についての研究が不十分である
②内阻害(グループに人が入ってこないようにする)と外阻害について性差の研究がない
③外阻害と関係性被害の関係が研究されていない
④測定する際に、倫理的な問題がある(誰が好き?嫌いなどを聞くのは問題あるよね……。)

ぽめ先輩
ぽめ先輩

③がないと、なぜ仲間外れ、無視が起こるのか説明できないという問題があるよ

また、④解決のために、グループのルールを個人がどう捉えているか?を調べることにしました。

本研究の目的

①内阻害と外阻害の性差を検討する
②排他性と関係性被害の関係を検討する

ぽめ先輩
ぽめ先輩

内阻害、外阻害をするのに男女で違いはあるのか?と、どうして仲間はずれが起きるか?を調べていくよ

そして、本研究の仮説は大きく2つです。

仮説①

排他性(内阻害および外阻害)は性差が認められ、男子よりも女子の方の得点が高くなるが、関係性被害には性差があるとはいえない

女子の方が、グループ外の人と関わった時の制裁を恐れている、という先行研究があることから、関係性攻撃を受けた時に、外阻害を受けた!と答える可能性が高い、と予測しています。

ぽめ先輩
ぽめ先輩

無視や仲間外れをされたとき、他のグループの人と仲良くすると、もっとひどい目に遭うかも……と考えている人は、女子の方が多い、と予想しているよ

仮説②

グループ内で起こる関係性被害は、内阻害ではなく外阻害が関連している

 もし、関係性攻撃を受けても、グループ外の人と簡単に仲良くなれるなら、そこまで影響はありませんよね。しかし、グループ外の人とのコミュニケーションが阻害されていると、無視や仲間外れをされると大ダメージになります。そのため、外阻害の方が関係性被害への影響が多いと考えられます。

ひつじさん
ひつじさん

見せしめのために無視や仲間外れをすることで、外阻害を受けるかも……と怖がらせている事例もあるみたいです……。

実験方法

実験協力者: 中学 1~3 年生の計 957 名
 調査方法: Google Form でアンケート調査

調査内容

基本情報: 性別・学年・クラス
友達グループの有無: 「あなたには、学校で一緒に教室移動したり休み時間に一緒にいるような決まった友人グループがありますか」
外阻害・内阻害・関係性被害: 先行研究の尺度をいくつか採用し、5件法(5段階)で質問

質問項目の例

「私のグループは、グループに新しい仲間を入れてはいけない雰囲気がある」
「あなたがグループ外の人と関わったとき,自分のグループの仲間によく思われない」
「友だちがいっしょになって、自分の悪口を言っていたことがある」

ぽめ先輩
ぽめ先輩

このようなアンケートを通して、グループのルールについてどう考えているか?と関係性攻撃を受けた経験について探っていくよ

分析方法

SEM(超簡単に言うと、複数の要因と、その影響の大きさを調べる方法)を使い、仮説を検証しました。
なお、グループに所属していない人などのアンケート結果は、欠損値として省かれています。

結果

①排他性を「外阻害」「内阻害」に分けるのは妥当か? →妥当!
②内阻害の性差 →あり。男子よりも女子の方が内阻害の得点が高かった。効果量は中程度。
③外阻害の性差 →有意差なし。
②内阻害と関係性被害の性差 →有意差なし。男女ともに中程度の正の相関。
③外阻害と関係性被害の性差 →有意差なし。男女ともに中程度の正の相関。

考察

仮説は支持されたのか?

仮説①

排他性(内阻害および外阻害)は性差が認められ、男子よりも女子の方の得点が高くなるが、関係性被害には性差があるとはいえない

分析結果をみてみると、内阻害では、男子よりも女子の得点が高かったのですが、外阻害・関係性被害は男女で有意差は認められませんでした。つまり、仮説は、「内阻害は女子の方が得点が高い」「関係性被害に性差がない」という部分は支持されましたが、「外阻害は女子の方が点数が高い」という部分は支持されませんでした。

仮説②

グループ内で起こる関係性被害は、内阻害ではなく外阻害が関連している

内阻害・外阻害と関係性被害との間には、両者とも中程度の正の相関が認められました。しかし、操作を加えてみたところ、内阻害と関係性被害との間には、有意な相関は認められませんでしたが、外阻害は操作しても中程度の相関がありました。よって、仮説が支持されたといえます。

ぽめ先輩
ぽめ先輩

2つの差が分かりやすくなるように操作したところ、外阻害のみ相関が出たんだね

以上の結果を踏まえ、さらに考察を加えていきます。

排他性および関係性被害の性差

女子の方が、内阻害を感じている原因として、以下のようなものがあると考察しています。

①女子の方がグループの規模が小さい
②女子の方が二者関係を重視する
③女子は1人になることを回避する傾向がある

これらのことから、グループに新しいメンバーが入ってしまうと、自分がグループ内で孤立してしまうという不安があるのでは、と考えています。

一方、外阻害に関しては、今のメンバーを失うリスクは男女共通であることから、性差が認められなかったのでは、と予想しています。

また、グループ内の関係性被害についても性差が見られませんでした。つまり、男女でグループの性質に違いはあるものの、その中で関係性被害が少なからず生じていることには男女で違いがないと考えられます。

排他性と関係性被害の関連

操作後、外阻害のみ関係性被害と関係がみられました。それは、「グループ内で関係性被害を受けている人は、グループ外の人との関係のもちにくさを感じている」という可能性を示唆しています。

ひつじさん
ひつじさん

グループ内で仲間外れにされたりすると、グループ外の人と仲良くしづらくなっちゃうんだね

このようなことが起きる順序は、①「外阻害→関係性被害」②「関係性被害→外阻害」の2パターンが予想されます。

①の場合は、グループ以外の人と仲良くなりにくい雰囲気を作ったうえで、無視や仲間外れなどをされているパターン。
②の場合は、グループ以外の人と仲良くすると制裁を受けるかも、と思いつつ、実際に関係性攻撃を受けると、「やっぱり制裁された!」とより外阻害を感じてしまうパターンです。

これらの結果から、グループの内阻害(グループ外の人が入れないようにする)よりも、外阻害(グループの外の人と仲良くならないようにする)の方が、グループでの関係性攻撃(無視や仲間外れ)の原因になる可能性が高い、ということが分かります。

また、先行研究と今回の実験の結果から、女子の方が制裁に敏感ではありますが、実際の被害を受けた時に他のグループに移りにくい、という感覚には男女差がみられないことが示唆されます。

本研究の限界

①被害者視点の研究であり、関係性攻撃をしている加害者の視点が考慮されていない
②関係性攻撃の精神的ダメージがどれほどかを検討していない

ぽめのまとめ

 今回、私個人の経験も思い出しながら論文を読んでいました。なかなかグループに馴染めないこともあったのですが、他のグループに入れてもらうのも、なんだか怖くて踏み出せないこと、ありますよね……。心理学では、実際に被害があるかどうかに関わらず、「なにか嫌なことをされるかも……」というだけでも行動に影響を与えてしまうことが分かっています。だからこそ、「気のせいだよ」みたいな声掛けは無神経だということが分かりますね。

今、悩んでいる人は、信頼できる人に相談してみたり、自分が悪いわけじゃない、と自分に声をかけてあげてくださいね。そして、相談を受けた人は、相手がどんな原因で悩んでいるのか、少し知ってもらえたらうれしいなと思います。

最後まで一緒に勉強してくれて、ありがとうございました!またね~。

この記事を書いた人

引用・参考文献

鈴木修斗,舒悦,大谷和大,加藤弘通. (2025). 「中学生における仲間集団の排他性と関係性被害の関係――集団外の対人阻害の点から――」心理学研究. 96,4. pp.207-217
保坂亨(1996)『子どもの仲間意識が育む親密さ――仲間関係における親密さといじめ』「現代のエスプリ」353. pp.43-51. ぎょうせい.

コメント

タイトルとURLをコピーしました