「英語が上手に話せる人」を思い浮かべた時、あなたはどんな人を思い浮かべますか?たくさんの英単語を知っている、英語で道案内ができる、などいろんな条件が思い浮かぶと思いますが、「流暢に話すことができる」という人を思い浮かべた人もいるのではないでしょうか。
では、「英語を話す流暢さ」に影響を与えるものには、どんなものがあるのでしょう?
今回は、それを調査した論文を中心に読んでいきます!
今回の中心論文はこちら!
英語で書かれてはいますが、比較的短く、シンプルな英語で書かれていますので、ぜひ原文にもチャレンジしてみてくださいね。
研究の意義・背景
研究の意義として、「英語は国際的なコミュニケーションツールである」ということがあげられます。
中心論文を書いたお二人はイランの研究者であり、いわゆる英語ノンネイティブの方々です。その視点から、「英語で」コミュニケーションをとる、ということは、ネイティブのみならず、ノンネイティブにとっても非常に重要なことであると指摘しています。英語には、いわゆる4技能(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)がありますが、コミュニケーションにおいて最も重要なのは、スピーキングの能力です。
さらにスピーキングの能力を細分化したとき、特にノンネイティブが英語で仕事をしたりする際には、流暢さと正確さが必要である、ということは、例えばRichards(2006)も指摘しています。
Employers, too, insist that their employees have good English language skills, and fluency in English is a prerequisite for success and advancement in many fields of employment in today’s world. The demand for an appropriate teaching methodology is therefore as strong as ever.
Richards(2006)
日本でも、コミュニケーション中心の英語教育が進んでおり、今後「英語の流暢さ」は重要な要素となってくることが分かると思います。
それでは、「英語の流暢さ」はどのように伸ばせばよいのでしょうか?
研究の目的
以上の背景を踏まえ、「流暢さ」に影響を与えると考えられる6要素について、実際に影響を与えるのか、実験を行います。
①年齢 (age)
②大学での教育 (university education)
③英語教師 (teachers of English language institute)
④英語を教えること (teaching English)
⑤辞書 (dictionary)
⑥ノートを書くこと、ノートテイキング (note taking)

どれが影響を与えそうか、想像しながら続きを読んでみてね
研究の方法
参加者
参加者は、以下の条件で選ばれました。
①参加者の英語で話す流暢さ
②海外に行ったことはないが、国内のEFL(English as a Foreign Language. 英語が公用語でない)環境で流暢さを向上させることに成功した人
結果として、
イランのシーラーズの英語教師と、EFL環境で学ぶ人々が選ばれました。

「英語学習に成功した人」のデータを集めたいようです
参加者のデータ
男性 10人 女性 7人 計17人
そのうち6人はEFL教師。彼らは芸術の学士号および修士号をもつ。(日本でいう人文科学系)
そのうち11人はEFL学習者で、かれらも学士号と修士号をとっています。
年齢 19~55歳
さらに、参加者にはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠のこと。語学の運用能力をA1(基礎)~C2(熟達)の6段階で評価します)を受けてもらい、C1またはC2の人を選抜しました。

優秀な人ばかりだ~!
実験手順
本実験の前に、予備調査(pilot study)を複数回実施。
→インタビューは参加者の母語であるペルシャ語で実施。録音、文字起こししたものを英訳。
→ただし、どのような質問をしたのか?などは記載がなく、不明。
実験結果
ここからは、インタビューの結果を要素ごとにみていきましょう!
①年齢(age)
年齢について、おおむね「英語を話す流暢さに影響を与えた」という意見が聞かれました。
なお、実験協力者は、平均9歳から英語学習を始めたとのことです。
理由をまとめると、以下の通りです。
①母語を学ぶのと同じように英語を学ぶことが出来た
②他の人より早く学び始めたため、インプットが結果的に多くなった
このような意見は、臨界期仮説と一致する、とShahihi(2017)は指摘しています。
臨界期仮説とは、言語を学ぶにあたり、適齢期がある、という考え方で、特に音声に関しては、幼い頃に学んだ方がよいと考えられています。
さらに詳しく知りたい方は、過去にKrashenの臨界期仮説についての論文をまとめた記事を書いていますので、ぜひそちらも読んでみてください。

②大学での教育 (university education)
大学での教育については、スピーキングに影響しなかった、という意見が多数でした。
ちなみに、実験協力者たちは英語を専門とする学部に進学しています。
①授業で英語を話す機会がほとんどない
②自分で英語を練習しなければならず、モチベーションが下がった
③一部の大学教員の英語のレベルが低い (単語の発音を間違える、アクセントの違和感)
④ほとんどの教員が授業時間外や研究室では英語を話さない
これはかなり進学先の大学によって差が出そうなポイントですね。言い換えると、大学で教師や生徒同士で英語を話す機会がたくさんあれば、好影響を与えることが出来そうですね。
しかしながら、日本でも授業は基本的に日本語で行う、という大学が多いので、大学教育だけでは、スピーキング能力を格段に伸ばすことは難しそうです。
③英語教師 (teachers of English language institute)
英語教師に関しては、「スピーキング能力に好影響を与える」と答えた参加者が多くいました。ちなみに、大学の先生を除く、これまでに出会った英語教師について答えています。教師のおかげでスピーキング能力が向上したと考えるポイントは、以下の通りです。
①英語教師への好意的な感情が、英語を勉強するモチベーションに繋がった
→特に、最初の英語の先生や、子どもの頃に出会った先生の影響が大きい
②英語のネイティブスピーカーの教師のおかげで、スピーキング能力が伸びた
特に、モチベーション向上について触れているコメントが多かったです。今回の実験協力者たちが英語の学習をしてみたい!続けてみたい!と思ったきっかけに、教師の存在が大きかったことがよくわかります。
第二言語を話すということには、不安がつきもの。その不安を解消できるような教師の働きかけは、長期的に好影響をもたらしそうです。
④英語を教えること (teaching English)
英語を教える教師たちの意見は、真っ二つに割れました。よい影響を与えた!と答えた教師と、悪影響だった!と答えた教師がいたのです。それぞれの意見をみてみましょう。
①英語を教えるために、自己改善をする必要があった
②スピーキング能力の中でも、発音の正確性が伸びた
③即興で話す能力が伸びた
①初級レベルでは限られた語彙や文しか使えない
②生徒の間違いによって自分も影響を受けた
以上のことから、授業準備をしたり、実際に授業をすることでスピーキング能力は基本的に向上しますが、教える相手が初級レベルの場合、かえって悪影響を受ける、と考えられます。
このように、英語教師が相手のレベルに合わせてスピードや語彙を調整することをティーチャートーク(Teacher talk)といいます。ティーチャートークの弊害を教師が感じている、というのは興味深い意見ですね。
⑤辞書 (dictionary)
辞書に関しては、流暢さを支える語彙の増加につながる、信頼できる情報源であるとして高く評価されていました。また、例文と定義を確認することが重要である、というのが共通の意見でした。
現在、紙の辞書とインターネットの辞書の両方がありますが、それぞれの長所が以下のようにコメントされています。
①複数の単語を同時に確認できる
②定義や例文をじっくり読むため、記憶に定着しやすい
何かをしながらでも、素早く意味を確認することが出来る
いずれにせよ、分からない単語の定義・例文を調べ、自分のものとすることで語彙が増え、結果的に流暢さにつながる、ということが共通認識としてあるようです。

「ローマは一日にして成らず」だね
⑥ノートを書くこと、ノートテイキング (note taking)
参加者の多くは、重要だと思ったり役に立つと思った単語や表現を書くノートを持っていました。前項の辞書と同じく、表現ノートを作ることで、語彙が増え、結果的に流暢さに繋がったようです。
そんな彼らのノートの特徴は、以下の通りでした。
①ノートは小さくて軽く、どこにでも持ち運べる
②表現が出てきた小説や映画のタイトル、日付も合わせて書く
③より実用的な表現を書く
→受容語彙(passive vocabulary, 理解できるが使えない語彙)ではなく、活用語彙 (passive vocabulary, 自分で使える語彙)を増やす!
④定義だけでなく、例文も書く
⑤色付きのペンを使う
⑥絵も合わせて描く
みなさんも、上記の特徴を参考に、表現ノートを作ってみるといいかも?
結論
実験結果を受けて、Shahihiは「幼少期が参加者の流暢さに大きく影響する」と結論付けました。
これは、臨界期仮説に基づき、幼少期の方が音声の習得に優れている点、教師によるモチベーションへの影響が大きいことに由来します。
もう一つの示唆として、大学での英語のインプットを増やすことが必要である、ということがあげられました。英語で話す機会がもっと与えられれば、大学教育も英語のスピーキング能力に好影響を与えられるのではないか、と考察しています。
ぽめのまとめ
この研究は、英語学習が上手くいった人たちへのインタビューをもとに、何が英語の流暢さに影響を与えるのか?ということを考察するものでした。このような、英語熟達者の学習方法などを研究することを、「達人研究」といいます。達人研究は、実践的な質的データ(数字で表せないデータ)を収集できる一方で、個人差の問題や、客観性の問題、数量的データの不足などのデメリットもあげられます。
とはいえ、今回の研究で得られた声も貴重なデータです。これを裏付ける検証を行っている研究もあるはずなので、これから論文探しの旅に出たいと思います!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!本日のゼミはここまで!お疲れ様でした~!
この記事を書いた人
参考・引用文献
Gholamhossein Shahini, Fatemeh Shahamirian. (2017). Improving English Speaking Fluency: The Role of Six Factors. “Advances in Language and Literary Studies”, vol.8, no.6. pp. 100-104
Stephen D. Krashen(1972) Lateralization and the Critical Period. The Journal of the Acoustical Society of America 52(1A)
Richards, J. C. (2006).Communicative language teaching today. Cambridge, UK: Cambridge University Press.



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