自己決定理論ってなに?【基本のキ】

動機づけ

 人に何かを教える、あるいはできるようになってもらうためには、教える側の技術や知識ももちろん大切なのですが、教わる側のやる気を引き出すことも必要になってきます。
 では、どうすれば人はやる気になる、目的のために頑張ろう、と動機づけられるのでしょうか?今回は、心理学の動機づけ理論の主要なもののひとつ、自己決定理論について、基本的なところを私の解説や邦訳とともに学んでみましょう!

 今回深掘りする論文はこちら!
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being.

APA PsycNet

研究の背景

The fullest […] ~these issues (Deci & Ryan, 1985, 1991; Ryan, 1995).

 まずは、この研究の背景や、これまでの研究について、確認してみましょう。

The fullest最高の representations表象・表現 of humanity人間 show people to be curious好奇心旺盛な, vital活力に満ちた, and self-motivated自発的な. At their best, they are agentic主体性のある and inspired触発された, striving努力 to learn; extend広げる themselves; master new skills; and apply応用する their talents才能 responsibly責任をもって.

Ryan & Deci (2000)

 引用した箇所は、要約(イタリック: 斜字になっているところ)を除く、最初の2文です。研究の前提となるところなので、一緒に確認してみましょう。
 「人間の最高の状態は、動機づけられた状態である」というのが前提になっていることが分かります。自発的に動機づけられ、成長しようとする状態をよしとしています。今回の自己決定理論など、動機づけ研究は、どうすればこの状態になるのか?を研究対象としています。なお、近年は、逆に「なぜ人は動機を失うのか?」を研究する、動機喪失(demotivation)という研究分野もあります。

 それでは、自己決定理論はどのような理論なのか、簡単に紹介されている部分を引用・紹介します。

It [human nature人の性質] also bespeaks~を示す a wide range範囲 of reactions反応 to social environments社会的環境 that is worthy of~に値する our most intense厳格な scientific科学的な investigation調査すること. Specifically, social contexts社会的文脈 catalyze~を引き起こす both within-~の中の and between-~の間のperson differences差異・違い in motivation動機 and personal growth個人的成長, resulting in~の結果になる people being more self-motivated, energized活気づける, and integrated in~に溶け込む some situations状況, domains領域, and cultures文化 than in others.[…]
Research guided研究指針 by self-determination theory (SDT) has had an ongoing concern with~に関心をもつ preciselyまさに these
issues問題 (Deci & Ryan, 1985, 1991; Ryan, 1995).

 この引用文は文構造が複雑で読みにくいので、訳すと以下のようになります。
「人の本性(動機づけられる、あるいはその逆)の、社会的環境による広大な範囲の反応を示すことは、最も厳格な科学的調査を行うに値する。
特に、社会的文脈は、ある状況、領域、文化によって自発的になり、活気づけられ、そして溶け込むようになった結果による、動機や個人的成長の個人差を生む。(略)
自己決定理論(SDT)のこれまでの研究は、まさにその点に関心を寄せてきた。」


 この、社会的環境、というのがミソです!
 私たちは、動機について考えるとき、「あの人はいつもやる気があっていろんなことに挑戦している」とか「あの人は何に対してもやる気がない」と、個人の性格や性質のせいだと考えてしまいがちです。しかし、自己決定理論では、環境が動機について与える影響についても研究しているのです。

ぽめ先輩
ぽめ先輩

「自己決定」という名前だけ聞くと、性格に関する理論だと思ってしまいますが、それだけではないのです

自己決定理論とは?

 自己決定理論について簡単にまとめるとするならば、「動機づけの個人差は、ニーズが満たされているかによって生じる」と考える理論です。
 具体的なニーズについては、今回中心として読んでいっている2000年の論文にもあるように、自律性(autonomy)、有能感(competence)、関係性(relatedness) の3つとなっています。
 自己決定理論について研究する人々は、これらの3つは、個人の幸福のために不可欠である、と考え、これらが満たされているかどうかが動機づけられるかを左右する、と考えました。
 前項で、「性格だけでなく、社会的な環境に注目した」とご紹介しましたが、どれも自分一人では満たせないニーズであることが分かると思います。

 自己決定理論を用いて、様々な分野の動機づけ研究が行われており、教育やスポーツなどの分野でも活用されています。

内発的動機づけ

 動機づけについて勉強したり、動機づけ研究の勉強をしていると、必ず耳にする言葉が、「内発的動機づけ (intrinsic motivation)」です。
 内発的動機づけは、ものすごくざっくり言ってしまうと、「他の人・ものの影響ではなく、自分の中から出てくるやりたい!という動機」を指します。
 鹿毛(1994)が内発的動機づけの成立をまとめていますが、心理学を学んでいないと難しい内容なので、簡単に言い換えると、「これまでは、人が何かをしようとするのは、飢えや性欲を解消するという刺激によるものだという考え方」に反論するために生まれたとされます。
 内発的動機づけは近年も研究が行われている分野のため、語り始めると長くなってしまうため、今回はここまでにします。

まとめ

 今回は、自己決定理論の本当に基本的な部分、「そもそもどういうものなの?」という部分を簡単に解説しました。
 動機は、その人の性格だけでなく、社会生活の中で生まれるニーズが満たされているかによっても影響を受ける、という考え方であることが分かりましたね。
 今回は基本のキ、ですので最初の研究を簡単に振り返るにとどめましたが、今後は自己決定理論に基づく研究もたくさん紹介できればと思います!それでは、お疲れ様でした~!

この記事を書いた人

ぽめ先輩

日本のどこかの大学院で勉強中のポメラニアン。
TOEIC 最高得点 730点、中学校教諭一種免許状(英語)、高等学校一種免許状(英語)を取得しています。
専門は英語教育史、英語学、第二言語習得、心理学、教育学です。
好きなものはおさんぽとアイドルマスターです。

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参考・引用文献

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78. https://doi.org/10.1037/0003-066X.55.1.68
上淵寿, 大芦治. (2019). 「新動機づけ研究の最前線」北大路書房.
鹿毛雅治. (1994). 『内発的動機づけ研究の展望』 「教育心理学研究」42, 3. 345-359. https://doi.org/10.5926/jjep1953.42.3_345

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