今回は、BBCのニュースを通して、世界のいろんな事情を勉強していきましょう!
今回読んでいくニュースはこちら!

主題としては、インドで施行されている禁酒令の効果について述べている記事ですが、その裏には、インドが抱える問題が隠れています。BBC以外にも様々なデータを用意しましたので、一緒に見ていきましょう!
ビハール州の基本情報
記事の内容としては、インドでいくつかの州は全面禁酒(酒類の所持、販売、飲酒の禁止)を行っていますが、その効果が疑問視されている、というものです。今回の記事の舞台は、ビハール州です。

インドの北東に位置する州です。インドには全部で29の州があり、ビハール州は面積としては中ぐらいですね。BBCの記事の中でビハール州は、”Bihar – India’s poorest state -” (インド最貧州)と書かれていますが、実際のところはどうなのでしょうか?
少し古いものにはなりますが、在インド日本大使館が2009年に実施した調査の結果が以下の表です。

この表の貧困率に注目してみると、特に農村部の貧困率が55.3%と高く、総合貧困率も53.5と主要な州の中で最も高いことが分かります。
禁酒法の効果
ビハール州では、特に女性団体からの要望が強く、2016年から禁酒法が試行されました。
State officials tout the policy’s success by pointing to big numbers: since the law took effect, 1.1 million cases have been registered and 650,000 people convicted for violations.
ここを読むと、多くの違反者が検挙され、有罪判決を受けており、効果が上がっているように見えます。しかし、実際には検挙されているのは飲酒している人がほとんどで、大元の製造を抑止できていないこと、闇市でアルコールが販売されていること、捜査の前に密告するケースがあることが問題視されています。
禁酒法の効果が出にくい理由
BBCは、ビハール州で禁酒法の効果が出にくい理由について、以下のようなことを挙げています。
- 警察の人員不足
- 複雑化する密輸の手口
- 酒類メーカーと当局の癒着
- 財産を差し押さえても酒造所が数日で復活する
- 地理的な理由
最後の、地理的な理由について、もう少し詳しく見ていきます。
今回は、Google mapでビハール州の周辺を見てみます。すると、
- ウッタル・プラデーシュ州
- ジャールカンド州
- 西ベンガル州
- ネパール(国)
と境界線が接していることが分かります。これらの州、国は禁酒法を適用していないため、お酒が密輸されてきてしまうのです。
経済的な影響
日本と同じく、インドも酒税をとっているため、禁酒法を施行するということは、酒税による収入がなくなることを意味します。
PRS(2023)は、ビハール州の財政に関するレポートの中で、以下のように指摘しています。
Impact of Prohibition on Government Finances
Bihar imposed prohibition on alcohol in 2016. Alcohol was the primary source of state excise duty. Between 2012-13 and 2015-16, revenue from state excise duty had ranged between 0.8%-1% of GSDP. In 2015-16, the state government earned Rs 3,142 crore from state excise duty, which came down to Rs 30 crore in 2016-17, and has become negligible since then. In comparison, in 2022-23, states on average budgeted revenue of about 1% of GSDP from state excise duty.
問題として、消費税(酒税含む)の税収が禁酒法前の314億2000万ルピーから3億ルピーにまで減少したこと、他の州と比べ、GSDP(域内総生産)の平均が低いことをあげています。
INDIA TODAYがこういった州の歳入の推移をグラフ化しています。

やはり、禁酒法を境に歳入が急激に減っていることが分かりますね。
このように、禁酒法にはポジティブな影響だけでなく、ネガティブな影響もあることが分かります。
州の歳入が減れば、公共事業や社会福祉にお金をかけられなくなるため、多くの人に影響が及んでしまうと考えられます。このような税収の問題から、禁酒法を解除した州もあるとBBCの記事では書かれています。
DVとの関連
禁酒法が制定されたきっかけには、ビハール州でのDV問題があります。
DHS Program(2021)の調査によると、「ビハール州の女性の40%が身体的または性的暴力を経験し、7%が身体的および性的暴力の両方を経験しています。 15歳以降に身体的暴力を受けた既婚女性のうち、最も多かった加害者は現在の夫(95%)でした。」
さらに、お酒とDVとの関連について、以下のようなグラフを発表しています。

一番左はお酒を飲まない夫をもつ妻がDVを受けている割合(34%)で、左に行くほど夫が頻繁に飲むようになりますが、それに比例してDVの割合も増えていることが分かります。
飲酒習慣の規準が不明確なため言い切ることは難しいですが、飲酒する夫ほど、妻に暴力をふるう可能性が示唆されています。
まとめ
インドのビハール州では、アルコール依存症の夫からのDVの対策として、禁酒法が施行されました。しかし、密輸問題や完璧な摘発が困難であることから、その効果には疑問符がついています。
私個人の意見としては、DV問題の解決方法としての禁酒法には効果がなかったのではないかと思います。理由としては、禁酒法前の、飲酒をしない夫からの暴力の割合は32%で、ほとんど変化がなく、10年間で効果が出ていないというのは経済的なデメリットと照らしてネックになると考えたためです。むしろ、税収を増やし、貧困家庭への支援をしていくこと、DV相談機関などを設立することが必要であるように思います。
皆さんは、どのように考えましたか?ぜひ、皆さんの意見を聞かせてください。
この記事を書いた人
引用・参考文献
DHS Program (2021) 「州最終報告書 ビハール州」 https://dhsprogram.com/publications/publication-FR374-DHS-Final-Reports.cfm
INDIA TODAY(2025) 10 years, no cheers: Profit and loss of Bihar’s alcohol ban. https://www.indiatoday.in/diu/story/10-years-no-cheers-profit-loss-of-bihars-alcohol-ban-2804208-2025-10-16
PRS Legislative Research.(2023)Bihar Budget Analysis 2023-24. https://prsindia.org/budgets/states/bihar-budget-analysis-2023-24
在インド日本国大使館(2009)「インドの人口・貧困状況」https://www.in.emb-japan.go.jp/Japanese/Indian_Economy_r.html



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