心理学を学んでいると、必ず名前を見ることになる、フロイト。無意識や自我について研究した人物ですが、その著作を読む機会はなかなかないと思います。そこで、このシリーズでは、フロイトの著作、『夢判断』(独題: Die Traumdeutung, 英題: The Interpretation of Dream)を少しずつにはなりますが読んでいきたいと思います!
読み方
私はドイツ語で読むことはできないため、英訳版を読んでいきます。また、初学者の方とも気軽に読めるよう、著作権が切れた様々な書籍や論文を閲覧可能な電子図書館、The Project Gutenbergのものを読んでいきたいと思います。日本語訳や解説は拙いものにはなりますが、私が行います。

また、重要なところは引用しますが、基本的に私の簡単な訳と解説で読んでいく予定ですので、別途上記リンクから原典を開き、合わせて読んでいただけるとわかりやすいと思います。
今回読む範囲
今回は初回ですので、目次の手前までを読んでいきます。
INTRODUCTORY REMARKS ~TRANSLATOR’S PREFACE まで!
INTRODUCTORY REMARKS (はじめに)
それでは、まずは「前書き」や「はじめに」に当たる部分を読んでみましょう。
第一段落 夢の解釈と神経病との関係について
In attempting […] から始まる段落です
In attempting a discussion of the Interpretation of Dreams, I do not believe that I have overstepped the bounds of neuropathological interest.
最初の一文ですが、夢の解釈を試みることは、神経病理学の範囲を超えることではない、と断っています。神経病理学とはどのような学問かというと、認知症など、神経の異常によって起こる病気の原因を解明する学問です。医学の一分野だと考えてもらえればOKです。
現在は研究が進み、神経疾患の原因は異常なたんぱく質の増加などが原因であると考えられていますが、当時はそうではありませんでした。
フロイトは、藤嶋(2003)が述べているように、ヒステリー研究でも有名な人物であり、神経病理学の範疇に、当時は「ヒステリー」があったことが予想されます。
つまり、この一文で言いたいのは、「夢を解釈することで、ヒステリーなどの医学的な研究にも寄与できるのではないか」ということです。実際に、この段落では、phobia(恐怖症)やobsession(強迫観念)、delusion(精神病による妄想)といった症例をあげ、夢の研究がこれらの治療に役立つであろうことを強調しています。
第二段落 本書の限界
But this relation, […] から始まる段落です
この段落では、この本や研究の限界について語られています。その原因として、フロイトは、
[…] the dream formation touches more comprehensive problems of psychopathology, […]
と、「夢の形成は、精神病理学の様々な問題と関連するため」と述べています。色んな病気や症状と夢は関連してるから、この本に書かれている内容だけでは語り尽くせないよ!ということですね。

それだけ重要な研究なんだ!ともとれます。限界と重要性を同時に語るとは、さすがフロイト!本の書き方も上手です
第三段落 資料となった夢の特性
Peculiarities in[…] から始まる段落です
長い段落ではありますが、書いてある内容はシンプルです。
この本では、当然「夢」が資料となります。この段落を読むと、フロイトは資料として自分の夢を選んだことが分かります。
その理由として、包み隠さず精神生活(psychic life)をさらけ出す必要があることを述べています。
夢と精神の関係を述べるわけですから、当然何を感じているか、考えているかなども述べなければなりません。そうなると、他の人が集めた夢や、文学作品に登場する夢、患者たちの夢は不適当、ということになります。
PREFACE TO THE SECOND EDITION (第二版の序文)
今回読んでいるのはThird edition, つまり第三版なので、その前の第二版が出た時の前書きも掲載されています。約10年後に出版された第二版ですが、序文ではどのようなことが語られているのでしょうか?
第一段落 第二版出版の意義
If there has […] から始まる段落です
ここでは、この「夢」の研究が精神医学の領域で非常に需要があり、それによって第二版が出版されることになった、と語られています。夢の分析は、当時神経症(現在は使われない言葉ですが)の治療に意義がある、と当時は考えられていたことが分かります。一方で、批判もあったことも分かり、当時は賛否両論あったと考えられます。
第二段落 初版との違い
I am glad to […] から始まる段落です
この段落では、初版との違いを述べてはいるのですが、フロイトはその段落をこのような一文で始めています。
I am glad to be able to say that I have found little to change.
「少ししか変わっていないことが分かったと言えることがうれしい」とあるように、論の本質は初版から変わっていません。新たな資料や見解を追加しましたが、本質は変わっていない、と強調します。間違いがないか確認したけれども、やはり論の核に誤りはない。フロイトの確かな自信を感じる段落です。
第三段落 夢解釈の持続性
Likewise, […] から始まる段落です
最初に述べたように、第二版は約10年後に出版されています。しかし、夢の解釈は大きく変化しなかったということは、ある出来事に対する短期的な反応ではなく、夢に現れる心理的反応は長期的なものであるといえる、とフロイトは述べています。
PREFACE TO THE THIRD EDITION (第三版の序文)
第二版に前書きがあったということは、第三版にもあるということです。と、なんだかCANDY TUNEみたいになりましたが、第三版の序文にも目を通しておきましょう。なお、第三版は、第二版から約1年後に出版されました。
第一段落 嬉しいけど、謙虚に
Whereas a period […] から始まる段落です
初版と第二版よりも早く第三版が必要となったことをフロイトは喜んでいます。一方で、関心が高まっている=本書が素晴らしい と一概には言えない、ともつづっています。
第二段落 研究の発展とその反映
The progress […] から始まる段落です
こちら、長い段落ではありますが、最初の一文(トピックセンテンス)に、重要な点が書かれています。
The progress in scientific knowledge has shown its influence on the Interpretation of Dreams.
「科学知識の進歩により、『夢判断』にも影響が及んだ」とあります。具体的には、神経症に関する研究が進み、夢の解釈の研究や、夢の概念が変化したことをあげています。そのため、第三版も、多数の加筆・脚注が付されています。
なお、フロイトは、さらに次の版が出版されることになるとしたら、こんなことが必要である、と述べています。
[…] to include selections from the rich material of poetry, myth, usage of language, and folk-lore, and, on the other hand, to treat more profoundly the relations of the dream to the neuroses and to mental diseases.
①詩、神話、語用、民間伝承のモチーフ分析
②夢と神経症や精神疾患との関わりをさらに扱う
第三段落 協力者への謝辞
Mr. Otto Rank […] から始まる段落です
ここでは、付録の選択やゲラのチェックをしてくれた、オットー・ランクへの感謝をつづっています。

オットー・ランクは、フロイトと非常に親しい精神分析家です。『夢判断』の第4版では、共著者になるほど、フロイトの研究に深くかかわっていた人物です。
第三版でも、付録や校閲にかかわっていたことが分かりますね。
TRANSLATOR’S PREFACE (翻訳者による序文)
ここには、翻訳者であるアブラハム・アーデン・ブリルによる序文が記されています。彼も精神分析家の1人であり、様々なフロイトの著作を英訳した人物でもあります。

今回最後の読解範囲です!さっそく読んでみましょう!
第一段落 本書を翻訳する意義
Since the appearance […] から始まる段落です
ここでは、『夢判断』を英訳する意義が記されています。最も意義があるといえるのは、以下の点でしょう。
Some of our readers have made an honest endeavour to test and utilise the author’s theories, but they have been handicapped by their inability to read fluently very difficult German, for only two of Freud’s works have hitherto been accessible to English readers.
「難解なドイツ語を読むことができないため、英語圏の人々にとって、今まで利用できるフロイトの著作は2作しかなかった」といいます。当然、フロイトの打ち出した精神分析という理論や手法は非常に重要なものです。ブリルは、ドイツ語から英語に翻訳することで、より多くの研究者にフロイトの理論を届けようとしたのです。

私たちも、その恩恵に預かってますね。ありがたや~
また、フロイト心理学に関する論文は、原著を知らないと、混乱する、ということも述べています。1,2冊読むだけではとても理解できない、と釘を刺しており、猛勉強と経験が必要だ!と強調しています。
ここからは私の意見になりますが、フロイトはその影響力の大きさの割に、なかなか原著を読まれない人でもあります。フロイトは心理学や医学だけでなく、当時の文学作品や批評、哲学など幅広い範囲に影響を与えており、本来様々な分野を学ぶ人々が触れておくべき人物です。しかし、原著を読んだことがある人は少なく、なんとなく「変態おじさん」的なイメージがあるのではないでしょうか?私がこの記事を書こう!と思ったのも、フロイトの著作になるべく元の形に近い形で、気軽に読めるように触れ、その思想を知りたい、広めたいと思ったからです。
と、アツくなってしまいましたが、そんな重要な本を訳しているブリルからも、熱意が伝わってきますね。
第二段落 「夢」を研究する意義
The Interpretation of Dreams […] から始まる段落です
ここでは、「夢」を研究する意義が、ブリルの視点から語られています。心理学者だけでなく、私たちのような一般の読者にとっても有益である、といい、その理由は以下の通りです。
He not only showed us that the dream is full of meaning, but amply demonstrated that it is intimately connected with normal and abnormal mental life.
「夢に意味があることだけでなく、通常の、あるいは病的な精神精確との密接な関係をも実証した」から、ということになります。
実際に、現代に生きる私たちも「正夢」を信じていたり、印象的な夢を見たら、その夢を見るに至った深層心理を知ろうとしたりしています。「夢は普段考えていることを表すのでは?」「夢にはなにかメッセージがあるのでは?」という考え方は、フロイトの研究から生まれたと考えられるのです。
第三段落 協力者への感謝
I take this opportunity[…] から始まる段落です
ここでは、翻訳に協力した、F.C. Prescott氏に感謝を述べています。
まとめ
今回は、『夢判断』の序文を読んでいきました。まだ本格的な内容に入っていないので、不完全燃焼の方がいたらすみません……。
しかし、この論文が書かれた時代背景や、なぜ「夢」が重要視されたのかは、私とこの序文を読んだことで、抑えることができたのではないでしょうか?(そうだといいなぁ……。)
今後は、実際の本文を私なりの解説や注釈を交えながら読んでいきたいと思います!それでは、また次のゼミでお会いしましょう!お疲れ様でした~!
この記事を書いた人
参考・引用文献
Freud, Sigmund. (1913). The Interpretation of Dreams. The Macmillan Company. (Brill, A. A. Translated). https://www.gutenberg.org/ebooks/66048
池田知雅. (2025).『神経病理学について』https://tokushige-cl.com/dementia/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%97%85%E7%90%86%E5%AD%A6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
藤嶋康隆. (2003). 『精神分析のどこが間違っているのか』「人間科学共生社会学」3. 69-80. https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_detail_md/?lang=0&amode=MD100000&bibid=944


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